「ーーーっ、?」


思わず息を飲んだ。
一体、いつから目の前にいたんだろう。
街灯の明かりに照らされて、にっこりと微笑む青年に声をかけられるまで全く気づかなかった。


(目の前に突然現れたような、)


いや、それよりも。




「お嬢さん、夜は危ないよ」


(なんて綺麗な声を出すんだろう)


…声だけではない。暗くて見えにくいが、明らかに整った容姿をしている。一瞬で目を惹く艶やかさに、この世のものではない違和感すら感じてしまう。

那智は不覚にも見惚れていたが、ハッと我に帰った時にはもう、青年から笑顔は消えていた。




「お嬢さんは…今日が雨の日だって、気付いて外に出ているのかな」




まるで雨の日に何かがある、と言った風な口調に背筋が一瞬凍り付いたのが分かった。