「ーっ!、っ!」
嫌だ嫌だ入りたくない。
そう念じつつもほぼ強制的に入れられた建物の中。
視界に広がるのは向かい合うようにして並べられたソファーと間の机。壁が本棚、というまるで書斎のような空間だった。
「(足場もほとんどない…)」
入った瞬間目の前に広がった光景よりも部屋の隅にある2階に続く階段だけがやけに不気味だった。
「ははっ、そんなに怖がらなくても何も出たりしないよ」
「お化けは出そうですけどね……」
こんな中であっけらかんとしてられる彼の度胸は素晴らしいと思う。というか、大通りの並びにこんな家があっていいのか政府。
「おーい、練丹(れんたん)、いないの?」
「っひ、!」
突然階段の方を向いて誰かを呼んだ隣の人喰いに、私は飛び上がる。
こんな人気がない家にまさか住人がいると思わなかった私は、再び誰かの名前を呼ぶように声を張り上げた紺さんの裾を強く握った。
ぎしり。
「ーーーーうるせぇな、聞こえてるよ」
何度目かの呼応で階段の軋む音が響く。暗闇からようやく姿を現したのは、これまたガタイのいい金髪男。
そしてその鋭い眼光を見て私は悟る。
……逆らったら殺される、と。

