気だるげに腕を引かれる那智は、紺と共に晴天のさなか、大通りの人混みを歩いていた。



ーーーー西暦が3000年を超えた今、人の数は膨大に膨れ上がり、夜中を除き道を歩くのも困難になっていた。人喰いとの共存が始まってからは随分マシになった方だが。

街並みも変わった。一軒家は殆ど無くなり高層ビルが建ち並ぶ風景が今は普通なのである。

(そう考えると今だに一軒家に住む私って時代遅れなんだな)



「那智の家ってさ、今時すっごい珍しいよね」

「……今馬鹿にしました?」

「いや?むしろ俺はあの家の造りの方が好きだな」


意外だ。人喰いは政府の保護(警戒?)対象なのだから、きっともっと凄いゴージャスなビルを好むと思っていた。
…この人柄からはあまり想像できないけど。



「ところで、一体どこに行くんですか」

腕を引かれ早三十分。
以前として目的地は分からないまま。


「あー、もう着くよ。ほら、あそこ」

「え、」


嘘でしょ。



紺が指差したのは、暖簾も看板もないただ真っ黒な外壁に、寂しくドアがくっついているようないかにも、というほどにヤバそうな家だった。