「私には無理な芸当だわ」

と、その人は言った。

…認知症と言っても、

昔の事は鮮明に覚えてるし、

聞いていたら楽しい…ただそれだけ。



「ミチカちゃん、斎藤さんを、

レントゲン室まで連れて行ってあげて?」


看護師さんに頼まれ、

笑顔で頷いた。


楽しくお喋りをしながら、レントゲン室へ。

レントゲン技師の、真鍋啓太さんに、

斎藤さんを託す。


「よろしくお願いします」

私の言葉に、真鍋さんは笑顔で頷く。


「了解。赤城さんって、この仕事に向いてるね?」

「そうですか?」


「ああ、患者さんたちが言ってたよ?

赤城さんは優しいから好きだって」


「ヤダなあ、照れるじゃないですか」

そう言って笑いながら、斎藤さんに手を振り、

持ち場に帰る。