Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「へぇ、オカ研なんてあったんスね?」

 身を屈めてボードを見た彼は興味深げに笑う。
 急に気恥ずかしくなって紗綾は俯く。元々、人見知りがひどいのだ。同性でさえ香澄以外とはあまりに上手に話せないのに、異性となればより難しいものである。
 彼の纏う空気に完全に圧倒されているとも言える。

「部活紹介には出ないから……」

 各部活に与えられるアピールの場はこの時間だけではない。新入生が集まる体育館で各部活の代表がアピールする時間がある。
 しかし、紗綾がオカ研は毎年それを拒否しているらしかった。あるいは、拒否されているのかもしれない。その扱いは完全に腫れ物である。

「いいっスよ、生贄になってあげても」
「え?」

 極めて軽い調子で彼は言う。
 一瞬紗綾は言われたことが理解できなかった。

「俺が生贄になってあげるっス」

 もう一度、彼は言う。
 からかわれているのかもしれない、紗綾は思うが、彼はニコッと笑む。