Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

 わかっていた。 本当はわかっていた。わかりたくなかっただけだ。
 現実から目を逸らしても何も変わらない。胃の辺りを押さえても痛みは治まらない。
 けれど、もし、魔法があるならば、一度だけかかっていてほしかったと紗綾は思う。
 もし、神様がいるなら、ささやかな願いだけは叶えて欲しかった。
 これから先、またずっと小さな不運が続くとしても。
 それでも、少しだけ、ほんの少しだけ許してほしかったのだ。
 自分の我が儘でしかないとわかっているとしても。


「置いてくなんてひどいじゃないっスか」
「圭斗君……」

 彼は慌てた様子で追ってきた。
 そうしてほしかったのか、ほしくなかったのか、紗綾にはわからない。

「俺は紗綾先輩にどこまでもついてくっつーか、一人でドMの人たち観察するドSな趣味はないっスから」

 彼は本当のことをわかっていないだけなのではないか。
 紗綾の中にそんな思いがあった。
 だから、圭斗からも逃げ出したのかもしれない。