「卒業おめでとうございます」

 花束を差し出せば、十夜は嫌そうに顔を歪める。
 思えば、去年、彼はこの役を放棄して紗綾に押し付けたものだ。
 前部長から新部長へ花束を渡すということに意味があるということだったはずなのに無視した。
 尤も、受け取る側である前部長の光も「どうせ貰うなら女の子がいい!」と駄々をこねたのだが。

「じゃあ、一応、俺からも卒業おめでとうっス」

 圭斗は言うが、やる気なさげだ。卒業式という行事に合わせて髪を黒く染めているが、きっちり絞めていたネクタイは既に緩んでいる。
 最早、髪をオレンジにしている必要はなくなったらしいのだが、それが自分らしいと言って彼は派手な髪色を続けている。

 あれから、オカ研は徐々に信頼を得ていった。
 メール相談、相談箱には時折いたずらもあるが、今や十夜を恐れる人間は減っている。
 未だに悪魔や魔王や生贄という言葉の名残はあるが、前ほどネガティヴな意味合いではなくなっているように思える。