「あーあいつなら、また放浪するみたいっスよ? 今度はアメリカとかなんとか」

 紗綾の視線に気付いて、圭斗は答える。

「あの人ともちゃんと話つけて、きちんと別れたって言ってるし、どっかのお姉……お兄さんとも和解したって……」

 そこで紗綾はほっとした。圭斗とのことだけをどうにかしたのでは意味がない。けれども、海斗もそれを理解していたようだ。
 彼は大人だ。紗綾が心配することでもなかったのだろう。

「将仁は昨日泣きながら俺に電話してきたけどね」

 海斗がいなくなれば、将仁はまたオカ研に縋る必要が出てくるだろう。
 賄賂を手にして嵐を拝み倒さなければならなくなる。毎度チクチクといじめられながら頼るしかない。