そうして、今日も部活が終わる。何事もなかったかのように。
 部室を閉め、嵐が見送る。当たり前だったはずのことが久しぶりに思える。
 圭斗と十夜と三人で帰るのももうないと思っていた。
 けれど、空気は重い。
 眷属のことを話した方がいいのかもしれないが、圭斗の前で話していいことだとは思えない。
 そんなことを考えていたせいなのか、圭斗は校門前でピタリと足を止める。
 視線の先に立っていたのは海斗だった。

「圭斗」
「海斗……」

 圭斗は困ったような表情をしている。
 逃げ出したいような顔だ。けれど、海斗も冷たい表情ではない。どう接したらいいのか迷っているようでもある。
 それでも、覚悟を決めた様子で紗綾と十夜を見る。

「すみません、圭斗お借りします」

 穏やかに、彼は本当に丁寧に頭を下げた。
 圭斗は不安げな視線を向けてきたが、紗綾は頷いてみせることしかできない。
 兄弟なのだから話し合うべきだと紗綾は思う。きっと和解できる。海斗ももう圭斗を攻撃しようとはしないだろう。そんな気がした。