「先輩、真剣に考えちゃダメっス」

 圭斗に笑われ、紗綾は嵐の冗談に引き込まれていたことに気付いた。油断するとすぐにこうなのだ。
 こうして紗綾は一年以上この悪魔に翻弄されてきたのである。
 香澄に、将来変な壺を買わされそうと言われるのもこういうところにある。

「いや、でも、部長のせいっスよね。この緊急召集」

 ちらっと圭斗が十夜を見る。

「何かあったんですか? 私、何も聞いてなくて……」

 緊急召集というのに自分が呼び出されないのはなぜだろうか。
 やはり、まだ部員として復帰できていないということなのだろうか。
 そう思うと不安でいっぱいになる。

「あれ? 黒羽から聞いてない?」

 嵐は不思議そうで、紗綾はパッと十夜を見たが、視線は逸らされてしまった。些細な素振りが胸に痛い。

「言う必要もないだろう。関係ないことだ」

 はっきりと言われれば、後頭部を殴られたような気分になる。
 ショックで頭がグラグラする。泣きたくなるほどだ。