「げほっ、げほっ……何するんスか!」

 飛んできた方角を紗綾が見れば、嵐が笑んでいる。
 策士ではなく、悪魔の笑みにしか見えない。
 本来、彼は策によって他人を陥れることを得意としているのであって、直接物をぶつけるようなことはしないはずなのだが……

「俺じゃない。俺じゃないよ。黒羽だよ」

 嵐の言葉は嘘臭く、何より十夜の位置は方向がまるで違う。

「貴様の仕業だろう」

 十夜に睨まれ、嵐はそれでも笑っている。

「違います。自分が言いたくても言えるはずのないことを言われた十夜君による超常現象シュートです」
「超常現象シュート……?」

 そんなものがあるのだろうか。
 確かに、サイキックには超能力者と言われる者も含まれ、念力の類を使える人間がもしかしたらいるかもしれないが、十夜はジャンルが違うはずだ。