中に入れば、やはり誰もいない。
 十夜がソファーで寝ているわけでもない。誰かが隠れているわけでもない。何の気配もない。
 不安なまま、紗綾が立ち尽くしているとまた物音がした。
 今度は近い。キョロキョロと見回す。
 窓は開いていない。風などが入ってくる隙間はない。

 ふと、歓迎会の時、善美といた夕方のことを紗綾は思い出す。あの時と同じ状況だ。
 これは心霊現象なのか。
 それが悪意のあるものだったとして、自分は本当に大丈夫なのだろうか。
 一人きりでこういったことに遭遇したことがないのだ。
 不審な物は見当たらないが、この部室にはそういったものしかないとも言える。
 一番怪しい棚に近付いてみる。スルリと棚から紙が床に落ちた。
 それから何か小さなものが転がり落ちる。