放課後、紗綾はドキドキしながら部室へ向かっていた。
 少しクラスメイトに捕まって遅くなってしまった。
 彼女達にもオカ研に戻るということを伝えないわけにはいかなくなってしまったのだ。
 文化祭までのことだが、全て夢になってしまうのではないかとさえ思った。
 折角、友達になれたと思った。普通の友達ができて、普通の青春をした。
 貰った写真だけが、それを残している。
 けれど、彼女達は見送ってくれた。
 これからも、ちゃんと友達だと笑って。

 そんな後押しもあって、紗綾の足取りはそれほど重くはなかった。
 部室に近付くほどに心臓が壊れるのではないかというほど動悸が速まった。
 だが、十夜がくれたネックレスを見れば落ち着いた。
 こうして、ずっとアミュレットのように持ち歩いていたいが、大切にジュエリーボックスに入れておきたいとも思ってしまう。なくしたり、壊れたりすることを考えたくはなかった。
 紗綾が去年手伝わされて作ったビーズを通しただけのものとは雲泥の差がある。
 むしろ同じ系列で考えるのが大いなる間違いだと思えるほどだ。
 それでも、売り子が久遠なら全て旅立っていくのだから不思議なものだ。