「風邪、もう大丈夫ですか?」

 十夜は答えないが、具合が悪くてここで休んでいたという様子でもない。

「あ、あの……」

 用件を言わなければ、そう思うのに、十夜が何も言わないせいで戸惑う。

「座ればいいだろう」

 やっと口を開いてくれたかと思えば、視線で紗綾の定位置を示す。相変わらずそこには星形のクッションが置かれている。

「し、失礼します……」
「そこは貴様の場所だろう」

 おずおずと座った紗綾に十夜は呆れているようにも見えた。
 どういう意味なのか、まだ居場所があると思っていいのか。
 聞くにはきっかけが足りなかった。