ポンと肩を叩かれて、紗綾はハッとした。つい物思いに耽ってしまった。

「気になるんでしょ? 行っておいで」

 肩を叩いたのは香澄だ。明るい笑顔がそこにある。

「善は急げっスよ」

 反対の肩を圭斗が叩く。その彼を香澄が不思議そうに見た。

「へぇ、引き留めないんだ?」

 どこか感心したようでもある。

「ここは潔く見送るっスよ。どっかの誰かと違うんで」
「部長、どこにいるかわかってたりしない?」

 昼休みは残り少ない。もしかして、と紗綾は圭斗に聞いてみた。彼の眷属なら居場所を掴んでいるかもしれない。
 だが、圭斗はニヤニヤと笑う。

「それは親友でも教えられないっスよ」
「ちょっと! 親友って何よ? さっきも一番の男の親友とか言ってたわよね?」
「だから、引き裂けないって言ったじゃないっスか」
「私を差し置いて!」

 香澄と圭斗が言い合いを始めてしまうが、十夜が気になる。

「まあ、あんたにはよくわかるところじゃないの。さあ、行った行った」
「うん、行ってきます」

 そうして、紗綾は教室を後にした。
 足は自然とあの場所へ向かっていた。