「人聞きの悪いこと言わないで下さいっス。しかも、さりげなく自分の物発言しないで下さいっス。ってか、なんなんスか。俺が先輩に何かしたとでも?」

 圭斗は肩を竦める。
 香澄は弁当を食べ始めたものの、怒っているのは間違いないようだ。

「あんたと同じクラスの子がうちの部にいて、色々教えてくれた。随分と棘があるそうで、女の子達には愛想良くしておかないと後々怖いわよ? 後ろから刺されたりして」
「あー、ご忠告どうも。でも、俺、先輩と違って人付き合いダメダメなんスよ。激しい人見知りで。だから、つい素っ気ない態度が出ちゃうんスよね。変にオドオドしていじられんのもやだし」
「私も人見知りだよ。どうにかしなきゃって思うんだけど……」
「コラッ、紗綾。変な仲間意識持たないの。こいつの場合、嘘なんだから」

 香澄は呆れた様子ではあったが、圭斗に向ける眼差しは本気で怒っているのではないようだった。どちらかと言えば、普段の香澄だと紗綾は安堵する。