「な・ん・で、あんたがここにいんのよ!? な・ん・で!」

 翌日、昼休み、香澄が割り箸で弁当の蓋をベチベチと叩いた。
 額にははっきりと不機嫌と書いてあるかのようだった。

 チラチラとクラスメート達が興味本位で視線を向けてくるのも気に食わないようでそちらを一瞥していた。皆、さっと顔を背けていそいそと弁当を食べ始める。
 香澄は一目置かれているところがあり、何かあった時には彼女をリーダーにしようとする動きがあるほどだ。逆らえないという存在でもある。
 彼女を頼るのは紗綾だけではないのだ。本人も元々の面倒見の良さから放っておけないようである。
 それを思えば、将也の後を継いで陸上部の部長を務めるのは当然のことだ。けれど、彼女は決して紗綾から遠くなったりはしなかった。
 いつまでも近い距離のままでいてくれる。それがたまらなく嬉しかった。