「勝手に教えるわけにはいきません」
「私はあの人の恋人なのよ!? あなたなんかには渡さない!」

 その剣幕に完全に紗綾は気圧される。
 彼女は完全に誤解している。思えば、あの時から海斗に利用されていたのだ。
 誤解を解かなければと思うのに、話が通じるとも思えない。
 こんな時に誰か助けてくれないと思うのは悪い癖だ。自分で、自分の力で解決していかなければいつまでも前に進めない。

「私は」
「何してんの?」

 決心して発した紗綾の声とその声が重なる。
 驚く彼女の視線の先、振り返れば、帰ったはずの圭斗がそこに立っていた。

「圭斗……」
「圭斗君……」

 彼はやはりあからさまに不機嫌だった。けれど、彼が睨んでいるのは女性の方だった。