Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「俺が保身のために他人に深入りしないのは認める。もう煩わしいのはごめんだ」

 その目が冷たさを持ち始めている。優しい仮面はもう壊れた。全ては紗綾を利用するための演技だったのだろう。

「あの人は、人を傷付けるのが怖いんです」
「ああ、彼は人殺しだからね」
「違います!」

 思わず、紗綾は声を荒らげた。
 海斗が口角を吊り上げたのを見てしまった。

「彼は君には真実を?」
「いいえ、何も聞いていません」

 真実など話してくれなくてもいいのだ。もし、話して楽になると言うのなら、いくらでも聞きたいと思う。
 だが、苦しめるくらいなら、黙って側にいた方がいい。それを望まれるならば。
 今はそう思える。

「なら、それは君が彼を信じたいだけだ」

 そうかもしれない。紗綾は信じたいと思っている。それは、同情心なのかもしれない。

「あの人はそういう人じゃありません」

 根拠があるのかと言われれば困る。他人を定義することなどできない。
 ただ、十夜から感じるのは戒め、自虐めいたものだ。
 何か罪の意識があるのは間違いないが、人殺しという言葉から連想するものとは異なっている気がする。