Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「……あなたは逃げてます」

 どうして、そんなことを言っているのか紗綾は自分でもわかっていなかった。
 疑惑の確信、協力できないという直感、ただそれだけだった。
 いつだってはっきりと自分の意見を言うことができないのに、今は何かに衝き動かされている。

「私が逃げている?」

 海斗の眉がピクリと跳ねる。それが仮面の剥がれる前触れのように思える。
 だから、紗綾は少し怖くて胃の辺りがもやもやするのを感じていた。喉の奥が締め付けられているような気さえする。
 けれど。口は勝手に開く。

「そうです。だから、協力することはできません」
「理由を聞かせていただきましょうか」
「あなたの言葉には心がないからです」

 どうして、自分にこんなことが言えるのか。
 本当に自分が言っているのだろうか。
 わからないまま紗綾は続ける。彼に協力したくないと思うのは本心だった。