「あれ? 何か忘れ物?」
いざ、王子喫茶にマリエを連れ戻り、首を傾げる将也と会うと紗綾は少し困ってしまう。
「そうじゃなくてですね……」
「ん?」
「この人?」
「うん、司馬将也先輩」
マリエにそう紹介すれば、将也も何かを察したようだった。
「えっと……彼女は神野マリエちゃんで、えっと……」
「あ、兄貴がお世話になってる……」
「もうポイされましたから。過去の女です」
他の人が聞いたら誤解されかねないことをマリエは言う。
嵐は彼女などと言っているが、マリエと将仁の関係はそういうものではない。
「兄貴って昔からどうしようもない鈍感で……、いや、刑事としての勘は冴え渡ってるらしいんだけど、肝心なところで、本当に仕事以外の肝心なところで人の気持ちがわからないんだよ――まあ、俺が言うべきことじゃないから、これ以上弁護しないけど」
「いい刑事さんだとは思います」
きっと、マリエは将仁に恩を返したいのだ。力になりたいのだろう。
将仁もその気持ちがわからないわけではないだろう。
「今度兄貴に会ったら思いつく限り罵倒するといいよ。言わなきゃわからない人だから」
「書き溜めておくことにします。言い忘れのないように」
「うん、それがいいよ」
マリエは一体どれだけ悪口を言うつもりなのだろう。将也も微笑んでいる。空気は穏やかなのに、不穏な会話がされている。
いざ、王子喫茶にマリエを連れ戻り、首を傾げる将也と会うと紗綾は少し困ってしまう。
「そうじゃなくてですね……」
「ん?」
「この人?」
「うん、司馬将也先輩」
マリエにそう紹介すれば、将也も何かを察したようだった。
「えっと……彼女は神野マリエちゃんで、えっと……」
「あ、兄貴がお世話になってる……」
「もうポイされましたから。過去の女です」
他の人が聞いたら誤解されかねないことをマリエは言う。
嵐は彼女などと言っているが、マリエと将仁の関係はそういうものではない。
「兄貴って昔からどうしようもない鈍感で……、いや、刑事としての勘は冴え渡ってるらしいんだけど、肝心なところで、本当に仕事以外の肝心なところで人の気持ちがわからないんだよ――まあ、俺が言うべきことじゃないから、これ以上弁護しないけど」
「いい刑事さんだとは思います」
きっと、マリエは将仁に恩を返したいのだ。力になりたいのだろう。
将仁もその気持ちがわからないわけではないだろう。
「今度兄貴に会ったら思いつく限り罵倒するといいよ。言わなきゃわからない人だから」
「書き溜めておくことにします。言い忘れのないように」
「うん、それがいいよ」
マリエは一体どれだけ悪口を言うつもりなのだろう。将也も微笑んでいる。空気は穏やかなのに、不穏な会話がされている。

