結局、浴衣カフェの売り上げに貢献させられ、教室に戻った三人はすっかり怒られることとなった。
 主に怒られたのはなぜか将也だったのだが、人気の三人はすぐに接客に戻らされる。
 とは言っても、十夜は隅で座っていただけで、紗綾はなぜかその見張りを頼まれながら、すぐ近くに作られた特別席でクレープを食べていた。


「連れ戻しといて何か言い辛いけどさ」

 将也は言うものの、全くそういう風には見えないのはなぜだろうか。

「黒羽はもういいって」

 笑顔で告げられる言葉に十夜が固まったように見えた。
 元々、人形のように座っていただけなのだが、それでも更に体を硬くしたように感じられたのだ。

「悪いんだけど、黒羽を適当に連れ回してあげてくれるかな?」
「俺は帰る」

 紗綾が答える前に十夜が言った。彼の場合、今すぐに着替えて本当に帰ってしまうだろう。

「駄目だよ、黒羽。ちゃんと学生らしいことをしないと」
「興味ない」
「興味なくても、最後くらい既成事実を作っておかないと。ねぇ?」
「思い出は大事です」
「……既に思い出したくないが」

 十夜の言うことも尤もかもしれない。望みもしない服を着て、見せ物にされた思い出など、一体いつになれば笑えるのだろう。