「……わかったよ、可愛い後輩に奢ればいいんでしょ?」
「いえ、後が怖いので遠慮します」
「ほんと、君は俺をなんだと思ってるんだろうね」

 最近の香澄と将也はわからない。部のことで行き違いでもあったのではないだろうか。そんな心配さえしてしまうが、何事もなかったかのように香澄が紗綾を見る。

「紗綾だけ行ってきなよ。佐野先輩がいるなら安心だし」
「ああ、俺が責任持つよ」
「代わりにうちの売り上げに貢献してください、ね?」

 香澄がそんな営業スマイルを浮かべるのを見るのは紗綾としても初めてだった。
 その背後ではにっこりと女子達が笑んでメニューを差し出していた。