演劇部の上演まで二人で色々と見て回り、劇を楽しんだ。
 また香澄とは別れ、展示でも見に行こうかと思っていた時、将也からメールがあった。

『最終兵器、逃亡中。もし、見かけたら連絡お願い』

 最終兵器とは十夜のことだろう。
 彼も王子の格好をしているのだろうか。
 見てみたい気はするが、会ってしまったらどうすればいいかわからない。
 将也に協力できないのは申し訳ない気もするが、会わないことを祈った紗綾は自分の性質について完全に失念していた。


「あ、すみません!」

 ぼーっとしていたら人にぶつかってしまった。
 咄嗟に謝罪の言葉を口にして、相手を確認しようと顔を上げた紗綾は固まるしかなかった。

「あ……」

 今、正に会わないことを願った男――黒羽十夜が目の前にいた。
 願ったところで回避できるはずもなかったのだ。起きてほしくないことほどよく起きるものだ。