「とりあえず、月舘は帰っていいよ」

 何を言われるか身構えていた紗綾は嵐の言葉に目を瞬かせた。

「打ち合わせは延期。これから面接するからね」

 廊下でのやりとりから締め出された紗綾にはよくわからないが、つまり、いても邪魔だということだと解釈した。

「あ、榊、月舘を送ってあげて」

 紗綾がクッションを鞄に持ち替えて立ち上がると嵐が圭斗に言う。

「一人で帰れます。まだ明るいですから」

 担任として顧問として心配しているのか、嵐はいつも決して一人では帰らないようにと言う。
 しかし、部活で遅くなったならまだしも、この時間はまだ帰宅部の人間が多く帰る時間帯である。
 だが、嵐はとんでもないとばかりに表情を変えた。