「あの、それ、冷めちゃわないですか?」

 追い払うつもりではなかった。永遠子はそういうことを気にすると知っていたからだ。

「あ……そうだね。母さんに殺される。行かないと」

 久遠はちらりと時計を見る。無茶な時間制限があっても不思議ではない。
 慌てて戻ろうとした久遠はふと思い出したように袋に手を入れ、何かを差し出してくる。焼きそばパンのようだった。

「あげるよ。お昼、まだでしょ? 返品は不可、遠慮はなし。迷惑料だと思って」

 貰ってしまって良いのだろうか。紗綾は断ろうと考えるが、久遠は受け取らなければ帰れないとでも言いたげだ。

「ありがとうございます」

 結局、紗綾は受け取ることにした。