「えっと……どこか行きたいところはありますか?」

 あてもなく歩いたのでは仕方がない。案内をする以上彼が行きたいところに連れて行くのが自分の使命だと感じていた。

「圭斗のクラスは何を?」
「外で、焼きそばと焼きそばパンを売ってるみたいです」
「焼きそば、ですか」

 圭斗を探せないと言ったことが本当なのかはわからない。
 疑おうと思えば全てを疑うこともできる。彼はそれだけ疑わしい人物でもある。
 けれど、海斗は圭斗が何組なのかさえ知らないのかもしれない。
 だから、まずは自分を探しに校舎まで来たのかもしれない。
 パンフレットを見ながら、紗綾はそんなことを思う。

「でも、多分……」
「圭斗はいないでしょうね。ただ、興味があるんです」

 どこまで彼を信じればいいのかはわからないが、全く嘘ではないだろうと思っていた。
 紗綾も丁度前庭に行こうと思っていたところだ。