感謝すべきか否か。
 文化祭二日目、一般公開日当日、紗綾は固まっていた。
 更衣室で嵐から預かっていた袋を開け、中身を引っ張り出したままで。

「違う……」

 呆然と呟く。
 違うのだ。春に渋々着た服とは違う。
 手違いであったなら、着なくて済むだろうか。
 残念ながら、この場合は着るしかないのかもしれない。

「紗綾? どうしたの?」

 後ろかけられた香澄の声に紗綾は、ぐぎぎぎぎ……と振り返る。
 どうしたらいいかわからず、首から下は未だに固まっている。

「うわっ……」

 紗綾を硬直させた正体を見て香澄は思いっきり顔を歪めた。

「さすがって言うべきか、なんて言うべきか……いや、やっぱり、さすがクッキー……生徒が考えることはお見通しって感じ。実は千里眼とか?」

 小声で香澄は言う。
 嵐から受け取って、確認するべきだったのだろうか。
 当日まで見ないでいようと思ったのが間違いだったのか。
 これは良かったと思うべきなのか。
 以前と違うと言われたら、どう弁解するべきなのか。
 紗綾はぐるぐると考えていた。