「香澄って、将也先輩のこと嫌いなの?」
「何よ? 急に」

 香澄は笑う。もしかしたら、将也の気のせいなのかもしれない。

「先輩が嫌われてるみたいなこと言うから……」

 そんなことはないと紗綾は思っていたが、香澄の表情は曇る。

「あー……やっぱり自覚、あったんだ。あの人」
「え、何?」

 紗綾には香澄が何を言ったのかよく聞こえなかった。
 それほど、香澄にしては珍しく小さな声だった。

「その内」
「え、何?」
「その内、話すから……」

 歯切れの悪いのも香澄らしくない。けれど、紗綾は頷くしかなかった。