「あの二人ってどういう関係? 姉妹? それとも、友達? つーか、卒業生?」

 手を振り終えた他の男子たちも興味津々と言った様子だった。他のクラスも似たような状況だろうか。
 なぜか、げっそりする十夜が思い浮かぶ。放課後には保健室には行かないだろう。部室で寝ているだろうか。まだ作業が残っているのだろうか。
 考えたところで、もう関係ないというのに。

 確かに美女二人組にしか見えないことは紗綾も否定しない。否定はできないのだ。
 二人とも長く伸ばした髪を明るい色に染め、パーマをかけている。
 片方は白とピンクを基調とした女性らしいファッションに身を包み、もう片方はジーンズでユニセックスな印象だ。
 真実を知るからこそ言うべきか悩んでしまうが、紗綾は嘘を吐けない。
 すっかり男子はデレデレしている。真実は彼らにとって残酷だというのに。
 確実に、一瞬の内に風船のように膨らんだ夢は破裂するだろう。

「お母さんと……息子だよ」

 紗綾は言った。一瞬、時間が止まったような気がした。

「親子かぁ……お母さんどっち?」
「どっちでも若いよなぁ~」
「って、月舘、息子じゃなくて娘だろ?」
「ううん、息子だよ」

 彼は言い間違いを指摘したつもりなのだろうが、紗綾は何も間違えていない。