「ほら、美人だろ? 両方とも」

 野島は二カッと笑うが、紗綾は言葉を失っていた。
 香澄も顔を引き攣らせている。
 この時期に突然現れる美人という時点で気付くべきだったのかもしれない。
 よく知った二人が堂々たる足取りで向かってくるのが見えてしまった。打ち合わせに来たのだろう。
 目が合う前に窓から離れようとした瞬間、一人が紗綾を見て、もう一人もまた顔を上げる。二人揃って、笑顔で手を振ってくるのだから困る。

「な、なぁ! 今、俺に手振ったよな!?」
「いや、俺だって!」

 すっかりのぼせ上がって、手を振り返す彼らの勢いは凄い。

「馬鹿な男ども……」

 香澄の呟きは誰にも聞こえていないようだ。

「と、永遠子さんと久遠さん……」

「月舘、知り合い?」

 野島が妙にキラキラとした眼差しを向けてくる。彼がこれほど輝いているのを見るのは初めてだった。