いよいよ文化祭前日、浮き足立つ時に厄介な来訪者がいた。
 わかっていたが、現実になってしまえば受け入れられないこともある。無意識に祈っていたのかもしれない。
 けれど、無情にも起こるものである。予想を悪い方向に上回る形で。

 HRが始まる前、急に窓際の辺りが騒がしくなる。
 特に男子が色めき立っていた。誰かが気付き、呼び寄せ、次々に群がっていく。
 そこには野島も加わっていて、くるりと振り返って紗綾を見た。

「おい、月舘も見てみろよ! ちょー美人がいるんだぜ!」

 最近の野島は彼なりに気を使ってか、何かと紗綾を仲間に入れたがる。

 始めの内は冷やかしもあったが、香澄が鎮圧した。彼は仲間外れにしないようにしているだけだ。

「あのねぇ、イケメンの方がいいに決まってるじゃない。大体、あんたの言う美人なんて当てになんないわよ!」

 そんな文句を言う香澄と一緒に窓の方へ近付いて紗綾は完全に固まった。