「さて、あんまり長居すると彼女達が心配するんじゃないかな? 田端が投入されちゃうかも。そんなことになったら、俺、今度こそ殴られちゃうね」
「すいません、長々と」
「俺は全然構わないよ」

 むしろ歓迎、と嵐は笑う。
 そんな時にポケットの中で携帯電話が震えた。クラスメイトからであった。

「もしもし?……もうすぐ戻るよ。うん、大丈夫」

 衣装を取りに行っただけなのに、なかなか戻らないから心配になったらしい。

「いいクラスメイトだね。さすが俺の生徒達。じゃあ、早く返してあげないと」

 嵐は笑っているが、寂しそうに見える。本当は返したくないのかもしれない。

「あの、最後に一つだけ……」
「ん?」
「私は何かの役に立てたんですか?」

 たとえ、彼らが守護霊を必要としても、それが何になると言うのだろう。
 自分がいた意味はあったのだろうか。

「海斗と一緒かもね。俺達は依頼人の心のケアはできない。月舘の存在は安定剤とか鎮痛剤とかそんな感じだった。どちらにとっても。黒羽の眷属がくれた贈り物だと思った。そのせいで苦しめてるのはわかってたのにね……」

 そう言われても紗綾には全く実感がない。