「今、また君を取り上げたと、憎まれてしまったでしょうが」

 あれから、ずっと圭斗とは話していない。
 どうしたらいいのか、何もかもがわからない。
 せめて海斗の話を聞けば、少しはわかる気がしていたが、益々混乱するばかりだ。

「それでも、もし、君が私の側にいてくれたらと思うんです。君が事務的なことを引き受けてくれるならば、きっと苦痛も和らぐ。君の持ってるオーラはとても心地いいんです」

 彼とは会ったばかりだ。
 それなのに、なぜ、これほど自分を必要とするのか。
 その言葉を素直に信じてしまってもいいのか。
 紗綾は考える。何度も何度も考える。

「たとえば、君が進学するならば、卒業してからでも構いませんし、時間がある時だけでも構いません。きっと、そんなに先のことは考えられないでしょうから、たまに、こうして会ってくれるだけでも十分です。お茶を飲みながらお話でもできればいいんです」

 進学、その言葉に紗綾は自分の胸に小石が落ちてくるのを感じた。
 もう二年生も半ばを過ぎようというのに、進路のことはまるで見えていない。