「あたしは怒るつもりはないのよ。ただ、話をしておこうと思って来たの。それだけ」

 確かに恐る恐る見れば怒っている様子はなかった。
 それどころか、いつもよりも優しく感じる。不思議なことだった。

「オカ研初代部長としてではなく、先輩として、まあ、女としてね……」

 一体、どういうことだろうか。
 紗綾には魔女の言葉の意味するところがわからない。ただでさえ彼女の言葉はわかりにくいのに、聞かなければ理解できないだろう。聞いたところで理解できる保証もないのだが。

「もし、話を聞く気があるなら、応接室に来て」

 逃げたら追いかけ回すと言っておきながら何なのだろう。
 応接室に行かないことは逃亡にならないのか。やはり、選択肢は与えてくれないのか。
 彼女はもうスタスタと出て行ってしまった。