「どういうつもりだ?」

 彼は怒っている。いつも怒っているように見られるが、今日は本当に怒っている。それぐらいはわかるようになっていた。
 だから、その詰問に萎縮してしまう。

「何が気に入らない?」

 責める口調に悲しさを覚える。本当に責められるべきは自分なのかと思わずにはいられない。

「どうして……どうして、何も教えてくれなかったんですか?」
「何のことだ?」

 十夜はとぼけているわけではないだろう。
 彼は、言わなければわからないだろうし、言ってもわからないのかもしれない。

「私には強力な守護霊がついてるって言われました」

 十夜が眉を顰める。

「……誰から聞いた?」

 怒りのせいか、その声はいつもよりも硬く感じられた。

「海斗さん……圭斗君のお兄さん、サイキック・カウンセラーの戒斗さんです」

 十夜は彼を知らないと言った。会わなければわからないだろう。会ってもわからないかもしれない。
 つまり、彼の他人への関心などその程度のものなのだ。
 だから、何も話さなかったとも考えられる。だが、許すこととは結び付かない。