しかし、オカ研にはもう一人いるのだ。
 絶対に忘れてはいけないはずの男が。
 放課後の教室に彼は現れた。
 魔王が姿を見せた瞬間、教室は静まり返る。彼は気にせず進む。

「来い」
「行きたくありません!」

 腕を引かれる、昔なら従ったかもしれないが、今は振り払う。
 今、従ってしまえば、きっと何もなかったことになってしまう。
 いればいいなどと言われて今は納得できない。

「月舘!」

 野島が十夜を止めようとするが、彼は気にせず紗綾の腕を引く。

「黒羽先輩! やめて下さい!」
「貴様には関係ないだろう」

 十夜に一蹴され、野島が怯む。その隙に強い力で引っ張られ、紗綾はついて行くしかなくなる。

「部室には行きたくありません!」

 はっきりと言えば、十夜はぴたりと足を止め、それから行き先を変えた。
 そして、向かったのは屋上だった。