「どうして!? 私にはあの人しかいないのよ? わかってるでしょ?」
「俺がわかってるのは、あいつは自分だけよければそれでいいってことだけ」

 それは、前に嵐が言っていた共通の知り合いのことなのだろうか。
 紗綾は二人の会話からどうにか探ろうと思っていた。結局わからないままであり、詮索は好きではないのだが、避けられない問題であると感じていた。
 彼の言葉には憎悪が込められているようにさえ思う。

「……また、来るから」

 女性は言う。
 今日のところは諦めるということなのか。

「来られても困る。本当に知らねぇし」

 圭斗はうんざりした様子だった。そして、くるりと紗綾と十夜を見た。

「お待たせしてすみませんっス」

 彼女はまだ何か言いたそうにしていたが、圭斗は決して目を合わそうとせずに、紗綾の腕を引いた。
 今すぐにこの場から離れたいと言うかのように。
 冷たいようにも感じられるが、圭斗もまた辛いのだろう。これは彼にとって歓迎すべき対面ではないようだった。