「それで、準備期間だけど、月舘はわかってるよね?」

 問われて紗綾は気分が重くなるのを感じた。わかってしまうからこそ憂鬱になる。今年は違っていればいいのに、と。

「また、内職なんですか……?」
「うん、内職だね」

 笑顔で言われても全く嬉しくなかった。
 紗綾にとって去年の文化祭はあまりいい思い出ではない。

「榊ってさ、器用?」
「自分ではそう思ってるっスけど、何スか」
「じゃあ、月舘と一緒に内職ね」
「内職って何なんスか?」

 圭斗がまた首を傾げる。
 何か良からぬものを感じているのかもしれない。