「昨日なんか月舘たちが帰った後、いきなり『腹減った』だぜ? 母さんもビックリしてたよ。慌ててご馳走作り始めたりしてさ」

 何となくその光景が目に浮かぶ気がした。
 ほんの少し会って話をしただけだが、彼の母親はとてもユニークだった。

「ニュース見てさ、もっとビックリした」
「悪さをしたいわけじゃなかったんだよ」
「そうだったみたいだな……兄貴は後で花を供えに行くって言ってたよ」

 帰り道ですら十夜は事情を説明してはくれなかったが、おおよそのことはわかる。
 悲しいことでもあるが、推測は当たっていたのだ。

「犯人、捕まるといいな」

 黒髪で白い服の女性は心霊スポットの近くで殺されていた。
 彼女は肝試しで偶然近くを通りかかった野島の兄に自分の存在を訴えていた。
 だが、野島の兄はその姿に恐怖し、自らを殺そうとしているのだと思い込んだ。けれど、女性は自分を見付けて欲しかっただけだった。
 それを十夜が導き、将仁に託した。
 そして、昨日、彼女の遺体が見つかったのだ。