翌日の教室で野島は何事もなかったかのようだった。
 今まで通り彼は友達と話し、目が合うこともない。
 だが、それでいいのだが、どこか寂しい気持ちもある。
 友達になることが無理なことぐらいわかっているが、諦められたら十夜のようになっていたかもしれない。
 どう足掻いても彼のようにはなれない。


 放課後、部室に向かう前、紗綾は香澄から屋上に行くように言われた。
 そこに待っていたのは野島だった。

「いや、ほんと助かったよ! マジで! 何があったか、全然わかんねぇけど、兄貴はすっかり落ち着いてさ」
「良かった……」

 解決したとわかっていても、やはり本人の口から聞くと、ほっとするものである。
 野島には十夜が何かしたようには見えなかっただろう。
 けれど、彼は確かに何かをしたのだと紗綾は思っていた。正確には、眷属にさせたのかもしれない。
 尤も、全ては推測に過ぎないのだが。