『もしもし? 十夜君?』
「将仁さん、今、大丈夫ですか?」
『紗綾ちゃん? あ、うん、何かあった?』
「黒羽部長が……」

 そこで紗綾は十夜を見た。しかし、彼は代わる様子がない。

「お化けトンネル、黒髪で白い服の女だ」
「お化けトンネル、黒髪で白い服の女だそうです」

 十夜の言葉を紗綾はそのまま告げる。これだけで通じることはわかっていた。
 何度も十夜は将仁を助け、時にその協力を仰いできた。だから、互いのことはわかっている。

『……わかった。調べてみるよ』
「お願いします」

 そうして、通話が終わり、紗綾は十夜に携帯電話を返した。