「あら、慎ちゃん。おかえりなさい。あらあら、そちらはお友達? 珍しいわね」

 野島家で紗綾達を迎えたのは彼の母だった。
 おそらく家にいるだろうと野島が言っていた通りだった。

「クラスメイトの……」
「月舘です」
「それと、先輩」

 少し困ったようにしながら、野島は二人を紹介する。決して遊びにきたわけではないのだ。
 すると、野島の母は十夜を見て、あら、と声を上げてそのまま彼に釘付けになってしまった。

「凄いイケメンさん。どうしましょ、握手とかしてもらった方がいいのかしら? 色紙あったかしら? それとも、写真? ねぇ、慎ちゃん、どうしたらいいと思う?」

 まるでスターでも来たかのようだ。
 紗綾は野島のこともよくわからないのだが、もしかしたら彼の母親はかなりマイペースなのかもしれない。
 これには野島も困り顔だ。

「か、母さん!」
「拝んでおかないと」

 はしゃぐ野島の母に、十夜は無表情のままだが、内心どうするべきか困っているようだった。
 完全に固まっていると紗綾は思った。どうにも彼はこういうことに対応できないらしいのだ。そして、紗綾もフォローしてやることはできない。