そもそも、この追いかけっこは紗綾が部室に向かっている途中で始まった。
 オカ研は本来呼び出しがある日以外は自由であるが、毎日部室にいる嵐と十夜の無言の圧力により、紗綾も毎日足を運んでいる。
 活動内容と言えば、嵐の話に付き合わされるか十夜にオカルト関係の勉強をさせられるかだ。

 今日は今年も無事に生贄を確保し、歓迎会の打ち合わせをすると言われていたが、気乗りはしなかった。
 あれは歓迎とは言わない、洗礼だと紗綾は思っている。
 けれど、阻止できるはずもなく、部室に向かう途中だった紗綾は渡り廊下に貼り出された部活のポスターを熱心に見ているリアムに声をかけられた。

「あの、すみません。クラブはここにあるだけですか?」
「あ、うん。大体、そう、かな?」

 渡り廊下は人通りも多く、紗綾が見る限りほとんどの部が並んでいるように見えた。ないとすればオカ研と非公認の集会だけだ。
 昨日彼もあの勧誘ロードを通っただろうにピンとくる部活がなかったからこうして見ているのか。