Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「ひーかーちゃーん?」

 その声は不気味に響いた。
 まるでホラー映画のように、空気が一瞬にして不穏なものへと変わっていく。
 慌てて光が振り返る。その背後に彼女はいた。
 歳は光と同じぐらいだ。私服姿の女で、長い黒髪がうねっている。顔に派手さはないものの、身につけているものを見る限りカラーセンスが怪しく思える。

「は、ハニー……どこに行っちゃったのかと思ったよ!」

 光がきょろきょろしていたのは彼女とはぐれたからなのか。
 だが、彼女はニコリともせず、光を睨んでいた。
 ハニーなどと言われるような甘い雰囲気は微塵もない。

「なに? その子」

 ビシッと、彼女が紗綾を指さす。

「いや、えっと……」

 問われた光は完全に対処に困っていた。
 当然、指さされた紗綾も困ってしまう。

「なにその子なにその子なにその子!」
「ひぃっ……!」

 光が恐怖している。そして、彼を助ける者は誰もいない。