どうするべきか、紗綾は悩む。
 いっそ、ここから大きな声で呼びかけたら十夜は出てきてくれるだろうか。
 すると、扉が開いて、圭斗が顔を出した。

「紗綾先輩、そこで何してるんスか?」
「ひぃっ……で、出たっ!」

 さっと、野島が紗綾の後ろに隠れる。

「大丈夫だよ。一年の榊圭斗君」

 幽霊でも何でもない。
 ただ、不良的な見た目が多少恐怖を与えるのは仕方がないだろう。
 しかし、ワルではないと紗綾は認識している。

「つーか、その男、何?」

 圭斗が野島を睨む。牽制しているようにも見える。
 それでは野島が余計に怖がるだろうに、どうしてそんな風にするのだろうか。
 思い返せばこんな風に圭斗が不機嫌になるようなパターンがあった気がするが、どういう条件なのかは紗綾には判断できなかった。