「こいつ、野島」

 さすがにクラスメートの名前は覚えていないのはまずい。誰だっけ、などと言えるはずがない。
 そうあたふたする紗綾に香澄が助け船を出した。

「野島慎二、同じクラスなんだけどな……」
「ご、ごめんなさい……」

 本人に言われて紗綾はしゅんとした。
 他人に興味がない云々と人のことは言えないのかもしれない。二年目になるクラスメイトのことさえまるでわかっていないのだから。

「いや、いいよいいよ。気にしないから」
「そんなに目立つ奴でもないしね」

 紗綾の記憶でもいつも誰かといるような気がしたが、中心にいたことはないように思えた。