Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「ぶ、部長、立ってください」

 十夜の前に立てば不機嫌なオーラに気圧されそうになる。
 更に具合も本当に悪そうでそっとしておきたい気持ちが強くなる。
 むしろ、彼は今すぐに帰って寝るべきなのではないだろうか。
 そこまでして彼はあの人物に会うべきなのだろうか。紗綾には決して理解できないことだった。
 わざわざ十夜を苦しめる意味があるのだろうか。

「俺が行く意味はない」
「具合が悪いのはわかりますけど……部長なんですからお願いします。すぐに終わるのはよく知ってるじゃないですか」
「理由があるとすれば、爺の俺への嫌がらせだ」

 十夜の言う通りなのかもしれない。
 だが、彼はいなければならない。
 だから、紗綾は彼を連れて行かなければならない。ほんの数分のためだけに。

「う、動かないと首が絞まりますよ」

 こうなれば圭斗が言ったようにネクタイを引っ張って連れて行くしかないのかもしれない。

「ほ、本気ですからね。本当に引っ張っちゃいますからね」

 そろりそろりと紗綾は十夜のネクタイへと手を伸ばす。
 魔王黒羽十夜を脅すのは恐ろしいことだが、効果はあったようだった。
 小さく溜息を吐いた十夜は渋々といった様子で立ち上がる。
 そして、二人は重い足取りで認定式会場を目指すのだった。