「大体、あの男、狐にでも取り憑かれてるんじゃないの? そういう顔してるし」
「確かに」
「やっぱりこっくりさんだったんじゃない?」

 好き勝手なことを言う二人に、この場に十夜がいたら絶対に呪われると紗綾は思う。
 彼こそこういう場所には現れないと知っているが、どこで耳に入るかはわからないものだ。
 十夜はなかなかに地獄耳である。

「まあ、きつい顔っスよね。俺の方が断然イケメンだし」
「あんた以上のイケメンはそこら中にいるわよ。うちの部長の方がイケメンかもね」

 圭斗は十夜に反感を抱いているらしかったが、香澄に対しても同じようだった。
 だからこそ、紗綾は不思議に思う。
 なぜ、自分には好意的なのかと。そう自分が勘違いしているだけなのだろうか。