放課後、紗綾が覚悟を決めて部室に行くと既に十夜と圭斗が来ていた。
 ソファーに体を預けている十夜の顔色が悪く見えるのは決して気のせいではないのだろう。
 歓迎会の疲労もまだあるのだろうが、別の理由が大きく関係していることが紗綾にはわかる。
 だから、今は何も言うべきではないと思っていた。言ったところで何ができるわけでもない。これは彼の問題だ。
 圭斗も既に向かいのソファーに座っているが、リアムの姿はなかった。座布団だけがぽつんと置かれている。
 やがて、やってきた嵐も部屋を見回し、首を傾げた。

「あれ? ロビンソンは? 一応来いって言っておいたのに」
「ああ、それなら、俺がクビって言っといたっス。紗綾先輩は俺を選んだし、なんかセンセーのこと怖がってたし」
「君も勝手なことをするね」

 嵐は肩を竦めるが、怒る気配はなかった。
 彼にとっては好都合であるのだろう。
 結局のところ、本当の生贄は圭斗であって、リアムのことは何かの手違いであったということだ。